⑦JAたじま

 羽を広げると約2メートルにもなるコウノトリ。かつては国内各地に生息していましたが、自然環境の悪化により絶滅します。日本で野生最後の一羽が確認された豊岡市で、「再びコウノトリが暮らせる環境を取り戻そう」と1965(昭和4)年に地域一丸となって野生復帰プロジェクトを始動。人工繁殖された5羽が、2005(平成 7)年に初めて自然界へと飛び立ちました。

 たじま農業協同組合でもコウノ トリがすみやすい環境をつくるため、 2003年から「コウノトリ育む農法」 による米作りに着手。餌となるカエルやドジョウなどがすむ田で、特別栽培米のコシヒカリ「コウノトリ育むお米」を育てています。「餌となる生き物を増やすには、1年を通してできるだけ田に水を入れておくのがポイントです」と担当する営農生産部の住吉良太さんと長谷坂知章さん。春は田植えの1カ月ほど前から水を張り、夏にオタ マジャクシがカエルに育ってから水を抜きます。秋に稲刈りが終わると肥料や米ぬかをまいて、冬に再び注水。コウノトリに害が及ばないよう農薬は極力控え、化学肥料も使いません。


 当初、豊岡市内の5軒の農家から スタートしたコウノトリ育む農法は、現在では但馬全域で約300人が導入しています。豊岡市日高町で米作りをする尾藤光さんも、2008年から取り組む一人。無農薬で6ヘクタール、減農薬で30アールを栽培しています。毎年2月に田に水を張ると、2週間ほどで土の表面に「トロトロ層と呼ばれる地層ができ、イトミミズやプランクトンなどが繁殖するそうです。「ヤゴやメダカなど8種類ほどがすみ、コウノトリが食べに来ます。昨年は近くの巣で2羽のひながかえりました」と尾藤さん。


 野生のコウノトリの絶滅から半世紀。今では再び大空を舞う姿が日本各地で見られるようになりました。それとともに生き物に優しい農業の形は、但馬の地で着実に定着しつつあります。