組合員活動報告

食育の可能性〜食育推進モデル校の実践〜「いただきます!」稲美町給食の米粉パン

2022.9.29

 教育現場で給食を通した食育の推進に努められた中尾幸雄先生から、その実践をもとに、学校や家庭の課題解決に繋がる食育の大きな可能性を伺いました。明石市立松が丘小学校は、平成17~20年に渡り、食育推進モデル校の指定を受け、「食育を通して人と触れ合い、豊かな生活を切り拓く子の育成~食を見つめ、食を楽しむ~」をテーマに食育を進めてきました。当時は「食育」という言葉も聞き馴染みがない中、実践前例がなく、教職員も手探りの状態からのスタートだったそうですが、「子どもに何が必要か?」「どんな子に育って欲しいか?」という観点から食育を切り拓かれたそうです。数々の取り組み例を多くの写真と共に紹介していただき感じたことは、子どもたちがとても生き生きとしているということです。そこには主体性が感じられます。野菜当てクイズ、調理の時間、渡り廊下にずらりと並ぶ干しだこ作り、栄養素を学ぶ〇〇レンジャー登場!お弁当作り、献立作り、バイキング・リザーブ給食、嚙む力を育むかみかみおやつ、ジュースの砂糖比べ、給食ピクニック、夏休み子ども料理教室など、楽しいアイディア満載の体験学習をされていました。子どもたちの手で育てた野菜は、子どもたちの手で収穫して洗い、給食でいただきます。毎日、手入れをすることで野菜を育てる楽しさや難しさを体感し、春夏秋冬を肌で感じ、命あるものに対する慈しみの心が育まれます。また、給食室まで子どもたちで野菜を運ぶことで、調理員さんがより身近な存在になります。
 また、校内だけではなく、海苔の加工場見学や、田植えと稲の収穫体験など校外が学びの場になり、教職員だけではなく、地域の方を招いてのお味噌作り、干しだこ作りなど校外の公的機関、民間団体、研究機関などと幅広く連携されていま
した。
 毎週水曜日は、高学年の生徒がお米を研いで、炊飯器で給食のご飯を炊きます。これは、家でご飯が食べられなくても、自分でご飯さえ炊けるようになれば生きていけるからとの思いからだそうです。生徒への思いが詰まった食育に胸が熱くなりました。これだけ学校が楽しいと、早く学校に行きたくなります。毎日通いたくなります。学ぶことが楽しくなります。松が丘小学校では、4年間で不登校生の数が17名から3名へと減り、給食の残飯量が減り、生徒間トラブルが減少し、早寝早起き朝ごはんの生活リズムが整い、学力が向上しました。また、保護者が食に対して求めていたものも「安さ」から「栄養価」へと意識が変わりました。「食育」には難しい栄養学は必要なく、ただ「食べることは楽しい」という体験が必要なのだと思いました。食べることは生きること。食べること、そして生きることは楽しい!という体験は、その人生を生き抜く何よりの糧になります。その取り組みを学校の先生が、家族が、地域の方々がこんなに熱心に支えてくれたのだという経験も一生の財産になります。大人たちが見守ってくれる、認めてくれる、その安心感の中で、子どもたちは自分を認め、自分の力を発揮できるのだと思います。
 会の後半は、年々減少を続けるお米の消費量を拡大していきたいという願いのもと、2004年に設立されたマイマイ工房代表、吉岡敏子さんにお話ししていただきました。試食でいただいた米粉パンは、稲美町の学校給食で出されています。ほのかに甘いお米の味と香りが感じられます。1個60gと小ぶりですが、1個で満足できるほど、噛み応えのある弾力が米粉パンの魅力です。稲美町議員を務めておられた吉岡さん。ご自身の経験から、何かを変えるには、同志の仲間を作り、多くの声を挙げ、幅広い運動をすることが大切だとお話しくださいました。
 会場、オンライン、合わせて約40名の方に参加していただきましたが、皆さんとても熱心に話に聞き入ってくださり、質問ご感想も積極的に手を挙げてくださりありがとうございました。

中尾先生から食育についての熱いお話を伺います