⑩マエカワテイスト
だしパックを製造する姫路工場。蒸煮釜を開けると熊本・天草牛深産イワシフシが湯気を上げ、切削工程では削りたての鹿児島・枕崎産カツオフシが豊かな香りを放ちます。配合エリアで原料数種をブレンドした後、粉砕してパック詰めへ。各ラインの要所に立つべテラン 職人が、てきぱきと機械を操ります。
「九州や四国の産地から仕入れる安全で良質な原料と、業務用だしパックで培ったプロの配合の妙が強み。食塩や酵母エキスを一切使用せず、無添加でほっこりと優しいだし本来の味わいがうちの自慢です」と取締役で3代目の前川拓摩さんは自信をのぞかせます。
同社の特徴の一つが研究所の存在です。探究心が強く研究熱心な現社長の前川隆嗣さんが、製品の科学的評価や機能性評価、さらには新製品の開発を目的に設立しました。だしの減塩効果や健康増進効果などにも着目し、だしを飲む「だしティー」文化の普及にも力を入れています。「昔ながらの製法や環境を踏襲するだけでなく、これからは科学的エビデンスを踏まえた上で製品を提供していかなければならないというのが現社長の教えです」
拓摩さんは2014(平成9)年に入社 以来、約7年の伝統に新しい風を吹き込んでいます。まず着手したのがSNSの活用です。5年前から、YouTubeで 会社や新商品の情報を発信。手つかずの状態だったホームページのリニューアルに取り組みました。職場の改革にも「人の力を必要とする作業と機械化できる工程を分けた上で、IT化やリモートワークなども視野に入れて考えていきたい」と意欲を見せます。
幼い頃から、自社製品はもちろん、味を比較するために他社のものが食卓に上がることもあったといい、今の子どもたちの味覚に着目。「離乳食に始まり、乳幼児の頃からだしに親しんでもらうことで、和食の味わいを未来へと伝えていく。それが使命だと思っています」。すでに 姫路市やたつの市では給食に採用されており、本物の味で食育に切り込みます。