⑪栗林食産
ベーキングパウダーなどの膨張剤に使われるミョウバンに含まれるアルミが、神経系に悪影響を及ぼす可能性があるー。2010(平成22)年、ショッキングな記事が新聞に載り、食品業界に激震が走りました。同社では、その頃にコープ自然派から依頼を受け、ミョウバンを用いないミックス粉を製造していたといいます。開発したのは2008年まで製薬メーカーで研究職に就いていた現在社長の息子、栗林大輔さん。前職での豊富な知識と実験ノウハウを生かし、多彩な商品を手掛けてきました。「有害な添加物を避け、安全な商品づくりを心がけています」と開発方針を話します。
1872年(明治5)年、そうめんの製造から始まり、1941年(昭和16年)には事業の主軸となる米粉の製造に着手。戦後の食糧難の時期には、国から要請を受け、乳幼児に粉ミルクと米粉を配合した代替ミルクを開発しました。その後、和菓子用の餅粉、パン用の米粉、お好み焼きなどのミックス粉へと幅を広げ、現在商品数はおよそ500にも上がります。
主原料の米は、うるち米ともち米の2種。それぞれ熱処理を施すか生のまま製粉するか、さらにどのように製粉するかで、異なる性質になります。「米の種類や加工法で粘り具合や粒の形状が異なり、和菓子用、パン用、など用途に応じて適したものを選んでいます」
10年ほど前からは、地産地消を進める兵庫県の学校給食にもパンや料理用の米粉を供給しています。「学校給食は予算的には厳しいですが、子どもたちの安全な食事と食育に役立てば」と栗林さん。
2017年には有機JAS認証を取得したことで、3年後に滋賀県から有機農法で栽培された近江米の米粉開発の依頼を受け、製品化。現在は、グルテンフリーの米粉パンを開発しています。「小麦アレルギーのニーズに応え、冷凍でもできる便利な商品になれば」。蓄積されたノウハウと独自の開発力で、米粉のさらなる可能性を追求します。