④ハイネリー
「万一、せっけんが人の口に入ってもコップ1杯の水を飲めば大丈夫、と先代の父が言っていました」と常務取締役の水本和子さん。1947(昭和2)年の 創業以来、作り続けているのは、天然油脂を原料とし、合成界面活性剤や蛍光増白剤、防腐剤、金属封鎖剤等を使わないせっけんです。その理由はひとえに人に優しいから。排水として海や川に流れても水と二酸化炭素に生分解され、せっけんカスは微生物や魚の餌になるため、環境保護にも貢献しています。
工場では、直径1メートル30センチの大きな釜に入った白い液体が、れんが造りのかまどでたかれていました。もうもうと湯気が上がる中、従業員が長いひしゃくでゆっくりとかき混ぜていきます。「約200キロの固形せっけんの塊を溶かした状態。この後、微粒子のけい酸を加えて練り状にします。弊社の看板商品『ハイネリー』です」と代表取締役の水本克治さんが教えてくれました。
環境へのこだわりは熱源にも表れています。電気やガスを使わず、工場内では全て薪、それも間伐材を使用しています。火力調整が自動ではない分、従業員の技量が求められますが、二酸化炭素の排出を抑え森林を守るためにも方針を変えるつもりはないそうです。
当初は粉せっけんを製造していましたが、平成に入ってからは、消費者の要望に応えて、溶かす手間がいらず、汚れがよく落ちる液体せっけんの開発に着手。従来の液体せっけん(脂肪酸カリウム)に、より洗浄力の高い固形せっけん (脂肪酸ナトリウム)を配合。低温でも 固まらず、汚れ落ちと使いやすさの両立を実現しました。「玄関や塀の上など家の至る所に研究中の液体せっけんを入れたビーカーが置いてありました」と振り返る和子さん。約6年かけて考案した液体せっけんは1994(平成6)年に製法特許を取得しています。
時代に合わせてさまざまな製品を送り出してきた同社。用途や形状は変わっても、本物のせっけんだけを作り続ける姿勢に変わりはありません。