②ココハウス
扉に「有機JAS認証圃場」の看板が掲げられた神戸市西区の大きなビニー ルハウス。中央の通路を挟んで左右に長さ30メートルのうねが3列並び、ホウレンソウやダイコンといった食卓の定番から、アイスプラント、子宝菜などちょっと珍しいものまで、多種多様な野菜が少量ずつ植えられています。
「温度や湿度に合わせて屋根の窓が自動で開き、雨や強い風をセンサーが感したら勝手に閉まります。水やりの量も1列ずつ調整できて便利ですよ」 と、自動制御機能について説明するのは 創業者の小寺正信さん。前職は大手電メーカーの営業技術でした。
「世の中にないものを創り出していた」という最先端技術の世界から転身したのは歳の時。明石市内で営農していた父親が亡くなり、荒れた畑の手入れに足を運ぶうち、農業に本腰を入れることを決意しました。
同時に固く誓ったのが、農薬を使わず、安全でおいしい野菜を作ること。お酒をたしなまなかった父親の死因が肝硬変で、農薬が影響しているのではと考えたからだそうです。以来約30年間、独自に農法を勉強し、試行錯誤を重ねながら規模を徐々に拡大。現在は父から継いだ農地と、母親の実家近くで譲り受けた農地など、合わせて1・2ヘクタールを家族と従業員の計7人で管理しています。
コープ自然派の野菜セットには、果樹園の果物や菌床栽培したシイタケなども含め、毎回7種類は入れるようにしているとか。バラエティーに富んだ内容で購入者を喜ばせるため、年間を通じて約10種類を栽培。「冬場にトマトを育てるような無理なことはしません」と話すように、土地や気候に合う作物を厳選し、旬を大切に、自然の力で育てています。
「野菜と対話して、野菜が求めることをやってあげたら、ええのができます わ」と豪快に笑う小寺さん。今年1月に代表を息子の正幸さんに譲り、できた時間で新しい作物に挑戦したいと目を輝かせます。